山ごもりをしている父。知らぬ間に“自分だけの”理想のキャンプ場をつくっていた話

2022年11月23日 18:00

[LANTERN – ランタン]

抜粋

ある日、ネット記事が目に留まった私。それは「山を買って自分だけのキャンプ場をつくっている人が増えている」というもの。最初は「ふーん」と流したものの、何か心に引っかかるものが……と考えて数秒、気が付きました。

「これ、お父さんじゃん」

そう、私の父は何年も前から記事に登場する人々と同じく「山を買って自分だけのキャンプ場を造ること」をやっていたんです。

再び始まった父の山ごもり

昔からアウトドアが好きな私の父、御年65歳。私の幼少期には、キャンプに行ったり、車遊びをしたり、家族みんなでアウトドアへ出掛けていました。今思えば、休日に家で過ごすことがほとんどない家族だったと思います。

父は以前にも、長野県内にある山中の土地を買ってきて、自ら切り開き山小屋を建てることにハマっていたことがありました。もちろん私たち家族も、その頃は毎度長野に出かけるのが日常でした。

そして十数年後…

父はある時から、休日や連休になると一人で沢山の荷物を抱え、下道をのんびり走りながら千葉県の自宅から群馬県のとある山中へ向かうようになりました。

「父は山にこもっているらしい」

山小屋づくりを終えて以来、再び始まった父の山ごもり。一体なぜ山ごもりをしているのか、当時は見当もつきませんでした。

父が山にこもる理由

父に話を聞いてみると、数年前に手に入れた群馬の山の中を開拓して、自分だけのキャンプ場をつくっていると言い出しました。

「キャンプがしたいなら、キャンプ場に行けばいいじゃないの?」と私。

「最近のキャンプ場は便利すぎるし、他人との距離が近くて面白くないだろ」と返す父。

便利な高規格キャンプ場や、キャンプ人気により混みあったキャンプ場を好まない人がいるのです。

今のキャンプは便利な設備に満たされすぎていて、父の思うキャンプとは違うようです。父は、昔ながらの自然に近いキャンプがしたいらしいのです。

ボウッと灯るランタンの光を頼りに歩き、夜まで仲間と楽しく焚き火を囲んで歌い、キャンプファイヤーを楽しむ。みんなが寝静まるころ、テントの中で風の音や木々のざわめきに耳を澄ます。父にとってキャンプとはそういう場所なんだそう。

そんな理想のキャンプ場をつくるために、ひとりで(たまに仲間と)山ごもりをしていました。

父がまずしたこと


最近、ワゴン車などをカスタムして車中泊ができるようにした車両が流行っていますよね。

父も同じことをしていました。山の中にキャンプ場をつくるとなると、急な天候の変化や仮眠用に車中泊ができるようにしなくてはなりません。自然が相手では、常にテント泊ができるコンディションが整っているわけではないからです。

軽バンの床を整えて、簡易的な棚を設置し、必要な荷物を持ってブラっと群馬に向かいます。

木の伐採などを終えて最初に取り掛かったのは、ウッドデッキ造り。

これで地面の状態に左右されずにテントが張れるようになります。車中泊ができると言っても、やはりテント泊はしたいようです。

ここをベースに、新たな開拓が始まりました。

山の整地


個人で楽しむキャンプ場と言っても、やはりある程度の整ったスペースが必要になります。

森の木を切り倒しただけでは、整地とは呼べません。山の中は一見平たく見えても、かなりでこぼこしています。しっかりと大地に根を張った木の根、岩などがそこかしこにあります。

人の手でこれらを取り除く作業をするには限界があります。そこで父は小型のショベルカーを投入しました。実は父、以前中古のショベルカーを買っていたんです。

ショベルカーをトラックに載せて山に向かい、自ら土地をならしていきます。さすが重機、どんどん作業が進みます。

大きな木の根がこんなに。確かに重機が必要です。

ショベルカーの力を借りても、やはり結構な重労働だったようで、数回に分けて作業をしたそうです。「かなり時間が掛かった」と熱弁する父。

ちなみに抜いた木の根や、切り倒した木々は、薪として作業の合間に焚き火……ではなくキャンプファイヤーに使います。そうです、父がしたいのはキャンプファイヤーです。

実家に置いてそうな鍋です。食事は適当な具材を放り込んで作る鍋や、サッとお湯だけ沸かして作れるカップ麺など、簡単なもので済ませているそう。

でもそれがまた楽しく、しかも山で食べると一層美味しく感じるんだそうです。

突然きた「たたまないテントできた」の連絡

ある日突然、父から「たたまないテントできた」と片言風な一言と共に写真が送られてきました。

キャンプ場をつくるために、長い間山に通い続ける父。時間がたつにつれて、こんな思いが湧き上がってきたそうです。

「ゆっくり寝たい」

夜中や明け方に“現場”に到着すると、テントを張るのは難しいし、どうしても車中泊になってしまう。しかしそこは小さな軽バン。1泊や2泊ならもちろんそれでもいいでしょうが……。

作業しながらずっとそこで泊まり続けるのは、狭くて不便だったそうです。

ある時から父はキャンプ地の整地作業と併せて、大工である友人の手を借り、三角テントのような小屋を建築していました。

土台→屋根部の骨組み→屋根→外壁部分→内装と、休日のたびに出向いて少しずつ作業を進めていったそうです。

たたまないテントの内部


ドアが取りつけられ、中には2畳ほどのスペースがあります。大人用シュラフが2つ敷ける程度の広さです。

テーブルを置いて、雨もしのげるくつろぎスペースとしても使えます。

採光と風通しのために、入口ドアの対面には3つの窓を設置。

壁面に物をかけられるので、狭いスペースを物置のような乱雑なスペースにせず、綺麗に使うことができます。

屋根材が貼られ、小さくてかわいい三角屋根の“たたまないテント”がある程度出来上がりました。(防水・透湿シートが剥き出しなところはご愛敬)

これで、夜中に着いてもゆったりと身体を休める事ができます。

いつのまにか、レンガによる“かまど”もできています。

なんだかちょっと童話に出てきそうな、なんともかわいい建物に見えてきました。

テントも張りたい貪欲な父


「小屋ができたけど、やっぱりたまにはテントも張りたい」

キャンプに貪欲な父です。テント泊もできるように、小屋の前もしっかり整地。そのスペースでテントを張って過ごしています。

終わらない開拓

山の中に土地を買って開拓するなんてすごく大ごとな感じがしますよね。実際、私もそう思っていました。しかし、父曰く、長い目で見れば何度もキャンプ場に行くより安く済むそうです。

地方の別荘地には、破格で売っている土地がある。維持費もそんなに高額ではない場合が多い。そんな場所をいつも父はどこからか見つけてきて、自分で開拓していく過程を楽しむのです。

電気があって、お湯の出る水道があって、きれいなトイレやシャワーがある。非日常でもありながら、不便を感じない。今、多くの人からキャンプ場にそれらが求められてるように思います。

しかし、不便を楽しむことも時には必要なのかもしれません。それはどこでも生きていける力をつけることにもなります。

私も今でこそ便利な生活にどっぷり浸かっていますが、この父の下で育ったので、幼少期から不便を楽しむ経験を積みました。

それはどちらかと言えばアウトドアよりサバイバルのそれに近いかもしれませんが、そのせいか「まあ、なんかどこでも生きていけるな」という謎の自信があります。

どんな薪が割りやすいのかの目利きや、薪割りに自信もあるし(それらが何の役に立つわけではないかもしれませんが)そんな経験も、今の自分に生活に活かされているように思います。

楽しみに終わりの見えない父

小屋ができて、整地がある程度済んでも、まだまだ父の中ではやりたいことが溢れているようです。

「冬になる前にやることがあるんだ!」

と、忙しそうに休日にひとりで(たまに仲間と)山に向かっていく父。子供たちが巣立ち、身体が動く限りは続けていきたい、唯一の楽しみなのかもしれないですね。

この記事を書きながら思い出したことがあります。それは幼い頃、父とスペイン・バルセロナにあるサグラダ・ファミリアの映像を見た時に言われた一言。

「これを見ろ!ずっと昔に作り始めたのに、まだ作り続けているんだ!すごいよな~!」

楽しそうに笑う父。実はそんなサグラダ・ファミリア、建築技術の発達で完成がもうすぐそこまで来てるんだそう。父のキャンプ場と、どちらが先に完成するでしょうか。

父のキャンプ場づくりは、まだしばらく続きそうです。

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